識者によるおすすめの作品コメント 白井嘉尚
白井嘉尚 Shirai Yoshihisa
1953年静岡県生まれ。東京藝術大学美術学部卒業、同大学院修了。美術家・静岡大学名誉教授。美術家としては、1980年代の《フリージグソーパズル》《シャーベットのように》。90年代の《版によるドローイング》。2001年以降の《森のなかの花》シリーズ。
美術展企画者としては「地域」に着目し、『遍在する波動』(マニラ・メトロポリタン美術館/1994)、『めぐるりアート静岡』等に参画(2013-20)。現在、『Art@東静岡』、『グランシップ 誰もがWonderfulアート』他のアートプロジェクト監修。
駆ける |
市川 文男 |
Fumio Ichikawa |
1947年生まれ。 社会福祉法人富岳会(御殿場市)所属。
知的障害。大胆な色使いとモチーフで独創的な絵が特徴。サイズの大きな画面をテンポよく水彩絵の具やポスターカラーを使って点描写のように丁寧に描きます。現在は同法人内の特別養護老人ホームで生活をしています。
識者おすすめのコメント
市川文男さんの作品、『駆ける』に惹きつけられました。なによりも色の美しさと多彩さに。
点描のせいでしょうか、色はニュアンスを帯びて、鮮やかでありながら深みがあります。またそこには色えらびと組みあわせ、点の大小、大胆なタッチと繊細なタッチなど、さまざまな変化があって、見あきることがありません。
絵には「パンダを描きました」という言葉が添えられています。その顔の正面はタンポポの花束のよう。胸や腹部は点々模様のキャンデーを散りばめたような可愛らしい色面。左右に広げた両手は暖かな毛糸のマフラーみたいです。また両足の大胆なタッチはおしゃれで斬新。背景は青を基調とした色面に赤や黄色やピンクの点描が織り交ぜられ、「パンダ」をいっそうひきたてています。
画面の真ん中には、何を表しているのかわからない形や模様が描かれています。それらは謎めいて、この絵に不思議な奥行きをもたらしているのではないでしょうか。