識者によるおすすめの作品コメント 成島洋子

成島洋子  Yoko Narushima

SPAC-静岡県舞台芸術センター芸術局長。静岡県静岡市生まれ。
1998年よりSPACの制作部スタッフとして活動を開始。
SPAC製作の舞台作品の制作のほか、「ふじのくに⇄せかい演劇祭」や「ふじのくに野外芸術フェスタ」「ストレンジシード静岡」の運営を行う。
国際共同制作作品や海外ツアーなど、海外のフェスティバルや劇場との渉外業務を担当するほか、地域における公共劇場の在り方を考えながら全体のマネジメント業務を担う。
制作部主任を経て、2008年より現職。静岡市文化振興審議会委員。

高橋 舞

Mai Takahashi

 

カラフルな刺繍やガムテープの貼物が、高橋舞の生み出す世界です。
ガムテープを幾重にも貼ります。何でも良い訳ではなくて、いろいろルールがあるらしい。
妥協はしません。
最近は自分で買ってきたものや人から借りたものを瓶に詰めるようになりました。
お気に入りが詰まった瓶は、いつも肌身離さず持ち歩くほど、大事なもののようです。(でも、中身はすぐに入れ替わります。)

 

識者おすすめのコメント

カラフルなガムテープが幾層にも貼られた立体。鮭を咥えた熊だったり瓶や箱だったり。

カラフルな糸で何重にも縫われた刺繍。窓のようだったり花のようだったり。

ピンクや緑、黄色。カラフルといっても少しくすんだ、優しい色づかいだ。

立体も刺繍も、どちらも高橋舞さんの手作業のエネルギーを感じられる作品である。

 

私は1年に1度、友人と自宅で「ダーニング」という、着古して穴などが開いてしまった衣類を繕うイベントをやっている。気に入っている服ほど繕ってでも着たいし、繕うことでさらに愛着がわく。繕うと、服も少し違う表情になるのも楽しみの一つである。

不器用な私はいつも開いてしまった穴をなんとか埋めるだけで精一杯なのだが、高橋さんのように絵を描くように刺繍できたらいいな、と憧れてしまう。

 

刺繍は、裂けてしまった世界の窓を繕ってくれているのかもしれない。

ガムテープは、中の傷を包帯のように修復してくれているのかもしれない。

壊れたものを修繕して、自分の大切なものとして生まれ変わらせる。

高橋さんはそうやって身近なところから自分の手で世界を変えていっている。