識者によるおすすめの作品コメント 小澤慶介

小澤 慶介  Keisuke Ozawa

一般社団法人アートト代表理事、インディペンデント・キュレーター
2016年に現代アートの学校「アートトスクール」(東京、清澄白河)を設立したほか、これまでに「六本木クロッシング2016展 僕の身体、あなたの声」(森美術館、2016年)において共同キュレーター、また「富士の山ビエンナーレ2016 フジヤマ・タイムマシン」および「富士の山ビエンナーレ2018 スルガノミライ」においてディレクターを務めるなど、現代アートの教育や展覧会事業に数多く携わっている。
現在、茨城県守谷市を拠点とするアーティスト・イン・レジデンス事業アーカスプロジェクトのディレクターおよび法政大学兼任講師を兼務している。

 

 

 

ハシビロコウ

櫻井 陽菜

Hina Sakurai

紙にパステル 515mm×728mm
2001年生まれ。藤枝市出身。
2020年よりwaC(ワンダフル・アート・コミュニティ)所属。
特別支援学校時代から美術表現の才能を発揮。物静か故に大人しく控えめな印象を与えるが、静かに淡々と描かれる表現には強いメッセージ性を含むこともある。
水彩絵具からパステルまで自在に使い分け、風景から動物表現まで独特な世界感で描いていく。
地道に積み上げられる力と幻想的な表現力が彼女の持ち味となっている。

 

 

 

識者おすすめのコメント

櫻井さんの《ハシビロコウ》が一目で好きになった。
はじめはなぜかわからなかったが、しばらく見ているとその理由がはっきりしてくる。
まず、大胆なモチーフの切り取りがすごい。櫻井さんは、その珍しい鳥の全体像ではなく、左側からぐっと寄って、胴体ばかりか嘴や頭の先を画面の外へ押し出して描いている。
これは、絵画というよりも、クローズアップといった映像でよく見る描写方法だ。
それによる思い切った画面構成に驚かされる。
そして、画面を色で大きく分割していることも特徴的だ。背景の赤と鳥の緑は、お互いの色を引き立たせている。色の面は大きく、それらの対比が鮮明なので、鳥の具体的な形と同じくらいに色の面の構成が際立ってくる。それはまるで、具象と抽象がぎりぎりの緊張感を保ちながら同時に画面に収まっているかのようだ。
そうやって生まれた《ハシビロコウ》は、こちらをじっと見ている。
この鳥から、しばらく目が離せそうにない。

 

 

 

作者その他の作品

「青いライオン」
紙にパステル・色鉛筆 364mm×515mm
「オカメインコ」
紙にパステル 515mm×364mm