識者によるおすすめの作品コメント 高市 純行
高市 純行 Yoshiyuki Takaichi

毎日新聞社で30年以上にわたり、美術展覧会の企画、制作、運営に携わり、
大阪本社文化事業部長、東京本社美術事業部長を歴任。
2021年より静岡市美術館副館長(学芸担当)、2024年より同館館長。
識者おすすめ作家
増殖(紅蓮) |
陶山 昌和 |
Masakazu Suyama |

沼津市在住。
主にペン画で細かい緻密な絵を描いています。
非常に疲れやすいため、体調が良い時に集中して絵を描きます。
【画歴】
令和元年 沼津美術協会展 大賞
令和元年 沼津市芸術祭 水彩・版画部門 芸術祭賞
令和元年 静岡県ふじのくに芸術祭 入選
令和三年 パラアート東京 2021 入選
令和四年 パラアート東京 2022 入選
令和四年 沼津市芸術祭 水彩・版画部門 芸術祭賞
識者おすすめのコメント
陶山さんのこの絵が好きだ。線が美しい。形がおもしろい。ところどころに差し色があるのもお洒落だ。
でも何を描いているのか、よくわからない。顕微鏡を覗いたような気分になる。細胞か、なにか得体のしれない生き物が分裂して増えていくようにも見えるし、丁寧に編まれたレース細工のようにも見える。
ものすごく集中力がいる仕事だろうなと思う。きっと描いたあとはくたくたになっているのに違いない。
大抵の場合、作家は沈黙し、何を描いたかは、他人には秘密のままである。タイトルから推測すると、やはり植物がモチーフなのだろう。紅蓮はくれない色の蓮の花。十一面観音が左手に持つ水瓶に挿してある花だ。孤独な手作業から生み出された花は、人々の願いを救い上げてくれる網のようにも見える。